先週発表された住宅メーカーミサワホーム中国の施工ミス問題。記者発表によると、「建築基準法に基づいて大臣認定を受けた工法通りに施工をしていなかった」とのことで、その対象数は岡山・倉敷で千棟余りに及ぶとのことです。
図:中国新聞掲載を引用
図のように、屋根裏の一部に石膏ボードを貼る工事なのですが、これは建物の強度を増す役割としておこなわれるもので、それをおこなっていなかったことが今回発覚したということです。施工している工務店からの確認によって発覚したと報道されていますが本当ならば何ともお粗末な話です。ミサワホームは「木質パネル工法」という独自工法で大臣認定を受け販売・施工をおこなっています。今回、認定を受けている施工マニュアルにある工事の一つが抜けていたということが問題になっています。
ミサワホームによると、この石膏ボードは構造計算に入っていないので耐震強度には問題が無いとのことですが、それよりも気になるのは、設計・施工・管理を一括して行い高品質な商品を提供することを売りにしている住宅メーカーが、一番重要ともいえる管理業務を怠っていたのではないかという点です。
住宅メーカーは工業化をする為に適した独自工法を考案し、それを個別に大臣認定を受ける形で販売・施工をおこなっています。工業化住宅の一番の売りは、高品質で均一な住宅を大量に提供することが出来る点で、アフターメンテナンスも含めた管理システムがその最大のセールスポイントになっています。それがこのような施工マニュアルにある工事の一部が抜けていた、分からなかったというミスをしてしまえば、消費者の信用を一挙に失ってしまうことになってしまいます。
住宅メーカーで多い、設計・施工・管理を1社で行うことは効率的に業務が進められる反面、チェック機能がうまく働かないという側面があります。人が現場作業でやることだからこそ管理チェックを厳しく行わなければなりませんが、実際には忙しさにかまけて手間を省いたり、工務店任せになってしまったりしているのも現実です。
住宅メーカーでは今回の施工ミス問題以外にも過去に数々のトラブルがありました。営業が住宅ローンの虚偽申込を行ったり、設計が建築確認申請を改ざんしたり、効率を追い求め工事期間を極端に短縮し施工ミスを起こしたり、決算対策のため完工をしていないのに引渡しをしてしまったりと、大量生産、大量販売を実現するための分業制の弊害や、過剰な収益を追求し過ぎることがその原因と言われています。これらは大企業である住宅メーカーだからこその影の部分かも知れません。
請負工事は信頼をなくしてしまえば成り立ちません。まして個人の住宅という一生に何度もない買い物をしている施主からすれば今回の人為的トラブルはとんでも無い話です。住宅メーカーにはその点を今一度肝に命じ、お客様目線での必要な仕事、信頼される仕事が出来る体制づくりをお願いしたいものです。